「今は野球界の人間ではなく、競馬界の人間です」

日本ダービー翌日の5月27日、

都内のホテルで開催された、

競馬雑誌主催の懇親会で、

佐々木主浩氏はこう演説した。

言わずと知れた、

横浜ベイスターズ、

シアトルマリナーズで日米通算

381セーブを記録した、

あの大魔神である。

懇親会に出席した

競馬ライターのH氏が言う。

「ライターやJRA職員など

参加者は100人ほどで、

佐々木氏の他にアンカツさんもおられました。

皆、口をそろえて

『佐々木さんのような人に競馬界を盛り上げてほしい』

と言っていましたね」

佐々木氏といえば、

5月12日のヴィクトリアマイルで

GI初勝利を手にして勢いづく馬主。

勝ったヴィルシーナ(牝4歳)は

昨年の桜花賞、オークス、秋華賞、

エリザベス女王杯で全て2着と苦杯をなめ、

5度目のGI挑戦でついに悲願を達成した。

ハマの大魔神が今や

“ウマの大魔神”

となって君臨しているのだ。

ひるがえってターフに君臨するスター騎手といえば、

やはり武豊を置いて他にいない。

今年の日本ダービーでは1番人気キズナに騎乗し、

5度目の同レース制覇。

近年は不振が続くとはいえ、

競馬界に武豊あり、

をあらためて知らしめたレースだった。

この同世代の超有名スター2人がタッグを組めば、

先の懇親会参加者の言ではないが、

大きな話題となることに疑いの余地はない。

ところが意外にも、

佐々木氏が馬主となった06年から現在まで、

その所有馬に武が乗ったことは一度もないのだ。

「佐々木氏が競馬界に参入したのは、

アドマイヤの冠名で知られる大馬主、

近藤利一氏の協力があってこそでした。

その近藤氏と武との関係が、

佐々木氏と武の間に影を落としているのです」

表情を曇らせて

こう語るのはJRA関係者である。

佐々木氏が06年に最初に所有した馬は、

道営競馬のミスターフォーク。

その頃、とある寿司店で近藤氏と知り合い、

同氏に誘われる形で07年に中央競馬に

馬主として参入することになったという。

そして近藤氏との共同名義で持ったのが

アドマイヤマジンだった。

「持ち分は佐々木氏10%、

近藤氏が90%だったと聞きました」

(馬産地関係者)

そして先のJRA関係者は2人の急接近ぶりについて、

次のように話すのだ。

「佐々木氏が競馬場に出入りし始めた頃は、

近藤氏にベッタリでしたね。

牧場関係者や調教師などを紹介したのは

全て近藤氏。

セレクトセールでも佐々木氏は、

馬の見方などを近藤氏から教わりました」

09年のセレクトセールで佐々木氏は、

みずからが社長を務める会社「

Sアールコーポレーション」名義で

「フサイチパンドラの09」を

7800万円で落札。

これが現在のスペルヴィア(牡4歳・1000万下)なのだが、

「エスアールのエス=佐々木のS、

アール=利一のRだそうです。

それほど2人は親しいということ。

『アクの強い近藤氏に連れ回されていて大丈夫なのか』

といぶかる人も競馬サークルにはいましたけどね‥‥」

(専門紙トラックマン)