競馬は「馬7騎手3」と

昔はよく言われたものだが、

近年は騎手によってオッズが変化し、

トップジョッキーなら

「馬6騎手4」

という声も聞かれるほど、

「騎手の腕」に対するファンの期待も高まっている。

これは何も馬券を買う側だけの話ではなく、

騎乗を依頼する馬主、

調教師も同じこと。

天才・武豊が社台から干された今、

「騎手の格付け」も大きく様変わりを見せているのだ。

昨年の有馬記念、

3番人気のエイシンフラッシュの単勝は、

前日発売で約7倍だった。

だが、レース当日の朝、

騎乗予定のM・デムーロ(34)が

尿管結石でダウン。

三浦皇成(23)への乗り替わりが発表されると、

オッズが徐々に下降し、

最終的には単勝10倍でレースを迎えた。

スポーツ紙記者が話す。

「エイシンフラッシュに重い印を打っていながら、

個人的な購入馬券の狙い目を変更している記者が多かった。

テン乗り(初コンビ)自体が割引材料ですからね」

乗り替わりの難しさについては、

後述することにして、

まずは「騎手の格付け」の

ポイントについて個人馬主が話す。

「よく『アイツは腕っぷしが強くて追える』

なんてほめ言葉を聞きますが、

実は大したポイントではない。

騎乗フォームを固め、

フィジカルを鍛えればできることですから。

それよりも、

馬の能力をしっかりと発揮させてくれる

ジョッキーこそが、超一流でしょう」

トップジョッキーの腕の見せどころは、

レース前のパドックから始まっているという。

個人馬主が続ける。

「オルフェーヴルの気性の激しさは有名ですが、

あのディープインパクトだって

3歳の春まではかなりのものでした。

ダービーのパドックなんて、

まるでロディオのようで、

武豊クラスじゃなければ

振り落とされていたかもしれない。

豊クンだからこそ、馬を上手になだめ、

リラックスさせて3冠馬に導けた。

馬主や調教師の多くがそう思っていますよ。

近年、外国人騎手が数多く起用される理由は、

豊クンのように、パドックで

またがった瞬間から馬と巧みにコンタクトが取れて、

馬場入りした瞬間、

スムーズに返し馬に入れてくれるからなんです。

馬が頭を上げて、持って行かれるなんてことは、

ほぼ皆無でしょう。

もし馬がエキサイトしたまま発馬すれば、

ジ・エンド。

ここまでで勝負の5割は決まってきます」

そして残りの5割がレースでの騎乗ぶりだ。

ここでも一流と二流では、

大きな差が生まれるという。

美浦の元調教師が解説する。

「10年ほど前に、社台軍団トップの吉田照哉氏が

『デットーリ(世界的な名手)が騎乗すると、

他の騎手より5馬身違う』

と発言していましたが、

騎手しだいではそれぐらいの違いが生まれます。

もちろん、

実際のレースで5馬身差がつくわけではない。

好スタートを切り、

妥協のないポジション取り、

決してブレーキをかけない道中のコントロール、

最終コーナーでは瞬時にコースを判断して突っ込み、

そしてゴールまで馬に気を抜かせない。

超一流の騎手は、

こうした全てをこなせる技術を持っているんです」