「社台ファームと照哉氏にとっては、

これが『ユタカはもうダメだ』

となる決定打でした。

武が御しきれなかった馬を、

外国人はあっさりと御して

勝ったわけですから。

折しもデムーロ、ルメールら

海外の若い騎手がそろって台頭し、

照哉氏は『世代交代だ』と‥‥」

一方、社台ファームと並ぶ

大集団ノーザンファームは、

武をどう評価したのか。

決断を下させたのは、

同牧場生産馬

ローズキングダムへの騎乗ぶりだった。

ローズキングダムは

10年11月のジャパンカップを勝った

(ブエナビスタ降着により2着から繰り上がり)後、

前述したように有馬記念は出走取消となったものの、

年明けの日経新春杯(GⅡ)、

日経賞(GⅡ)の前哨戦を使って

5月の天皇賞・春(GⅠ)へ、

というステップを踏んだ。

社台グループの内情を知る

馬産地関係者が振り返る。

「ローズキングダムはスタート後、

スタンド正面、2週目の3コーナー前に来るまでも

引っかかってガーッと行ってしまった。

最後はスタミナ切れで、

3200メートルの長丁場を乗り切れませんでした」

結局、2番人気を背負いながら

直線ではバッタリと失速し、

11着という無残な結果を残すしかなかった。

これ以前から

社台ファームの馬の騎乗ぶりを見てきた

ノーザンファーム側は、

「このレースを受けて、

『かかる馬にはちょっと無理だ。

武を乗せないようにしよう』

という結論が出された。

トドメですね。

これ以降、『武を乗せるな』

とのお達しが出たのは本当の話です。

社台ファーム、ノーザンファームの共通認識として、

信頼度がガタ落ちしたのは事実。

騎乗依頼の優先順位は、

1位が外国人、

2位が内田博幸、蛯名正義、福永祐一、岩田、横山ら

リーディング上位で、

武は川田将雅、松岡正海といった

3位グループの一角にいるとの位置づけです。

もちろん、昔は1位にいましたが」

(前出・馬産地関係者)

凱旋門賞、

阪神ジュベナイルフィリーズに続く3大失態で、

天才と呼ばれた男がここまで評価を下げ、

そればかりか、

「武回避」にまで至る技術的な衰えを招いた背景には、

先にあげた毎日杯での

落馬骨折事故があるのは明らかだとされる。

「休養中の騎手は、

他の騎手が活躍しているのを見ると、

どうしても焦って復帰を早めようとします。

武も本来なら1年近くかかるとされる大ケガで、

完治しないままわずか4カ月後に戦列に出てしまった。

肩の可動域が元に戻らず、

激しい腰痛も抱えたままです」

(専門紙トラックマン)